リモートワークを神話にしない実践者勉強会に参加してリモートワークについて考えてみた

リモートワークを神話にしない実践者勉強会というものに参加してきました。
「リモートワークをどう実践しているか学べる場が欲しい」という目的で開催されたとのことです。

forkwell.connpass.com

現在私の所属する会社ではリモートワークは育児、介護などの一部の人だけに許可されています。私も育児の理由で1年半くらい週2でリモートしています。
また、全社員に向けてリモートワークを制度化しようという動きもあったりするので皆さんどんなことで悩んでいるのか知りたかったという気持ちもありました。

セミナー内容のざっくりメモと自分なりの考えをまとめてみます。

内容メモ

トーク - 株式会社grooves

イントロ
  • クラウドエージェント事業部
    • ほぼリモート
      • 月1出社も
    • 完全にリモートと割り切ってチームビルディング
  • Forkwell事業部
    • 週初と、月末以外の日は個人の判断でリモート可
リモートワークの導入まで
  • 一人のエンジニアから始まった
    • 会社に行かなくても仕事ができる状態だからリモートしていい?
  • 上司の不安
    • その人単体では機能するけど周りのメンバーとの関係は維持できるのか?
    • エンジニア以外もリモートしたいって言い出したらどうしよう...
  • まずは週2からはじめてみた
  • 質の高いコードを量産しだした
  • これをきっかけに社内にリモートワークの良さが広まってきた
どう解決したか
  • 大前提となる考え方
    • 付加価値を最大化すること
    • ひとりひとりの裁量、自由度が必要
  • Q: その人単体では機能するけど周りのメンバーとの関係は維持できるのか?
    • A: 向き不向きがある
    • リモートが向く人
      • 能動的である、自律的である
      • テキストでの高いコミュニケーション能力
        • 相手に配慮した会話
        • その上で言いたいことが言える
      • 情報アクセスの容易さ
        • 本人だけが持っている情報もチームの資産
        • 周りのメンバーはその資産にアクセスする権利がある
      • 利他的であること
        • 自分の利益だけでなくチームの付加価値向上にこだわった行動、振る舞いができること
    • リモートする上で払うべきコスト
      • ログを残す
        • 曖昧なものごとも言語化する努力が必要
      • チャットは返答する、スルーしない
        • リモートでも必ず返答があるという信頼感が必要
        • 即レスしろということではない
      • オフラインコミュニケーションの時間を有効につかう
        • オフラインでの関係構築が大事
  • Q: 他のエンジニアがおれもおれもと言い出したらどうする?
    • A: 小さく試して判断する
    • 本人とメンバーが発揮するバリューが落ちないならOK
    • 不公平感 < チームの成果
    • 職種ごとにバリューを発揮できる環境、時間帯が違うのは当たり前
      • バリューが発揮できるかどうかを小さく試していく
その他
  • ツールを使えるリテラシーが大事
    • エンジニアがエンジニア以外の人にもいろいろ教え回っていた
  • ジュニアな方だと育成は大変
    • 中途採用の応募者の数、質があがっているので結果的に教育コストは下がっている
  • 新メンバーが加わったとき、キックオフMTGは対面が有用
  • リモートワークに向いていない人はどうすればいい?
    • トレーニング推奨

LT

スマートキャンプ株式会社
  • リモートワークの立ち位置
    • 従業員の生産性、快適さを追求する取り組み
  • 月一で働き方を考えるMTGしている
  • 開発チームの取り組み
    • 毎日1時間の集中タイム
    • MTGを全て火曜日に
  • リモートワークは水曜日に、リモートワークデー
  • ルール
    • 勤怠はSlackで
    • 勤務時間内はSlackで連絡が取れるように
  • 集中してクリエイティブに開発したい作業を水曜日に持ってくる
  • 実体としては半数は午後から出社して静かなオフィスで開発していたり
  • ノートPCを全員に支給
リンカーズ株式会社
  • 週2でリモート勤務OK
    • 使っても使わなくてもOK
  • MattermostとSkype for Business
    • Slackは使わないでMattermost使っている
      • セキュリティ的な理由
  • コミュ力が高いことが大事
サイボウズ株式会社
  • 半分のチームがリモート
  • リモートワークに必要なこと
    • 制度、風土、ツール

座談会

  • メンバー同士でコラボレーションするときに気をつけていることは?
    • 新人にもやってもらっている。やった後に何が良くて悪かったのかちゃんと振り返ってもらう
    • 成果物だけで評価は難しい
    • サイボウズは市場価値で決めたりしている
    • マインドとかツールではない
      • 情報の整理ができるか。人によって情報の精度は違う
      • 勘で言っているのか何か事実に基づいて言っているのかの判断が必要
      • 嘘をつくことは前提で信頼する
        • 100%事実を伝える人間はそういない。それを念頭に。
  • 過去に起きた問題はある?
    • セキュリティ事故は怖い
    • 不公平感が出ちゃう
      • 不公平感は絶対出るよという前提
        • 育児する人しない人とか。そうい感情は割り切ってもらう
  • リモートに慣れるためにやっていることある?
    • リモートに向いていそうな人をそもそも採用している
    • 最初のチームビルディングは大切にしている
  • オンラインでチーム感を出すための工夫
    • オンラインでゆるいやりとりができるように
      • Slackなどの使っているツールでTwitterみたいな使い方をする
        • timesチャンネルみたいなもの
    • オンラインでも成果を求めればチーム感は自然と出てくるのでは?
  • Linkersではチャット上では議論しないルール
    • チャットはあくまでも報告の場、アツい議論はオフラインで
  • サイボウズはとことんオンラインで議論する派
    • そういうときは収拾させないで燃え尽きさせる
    • 議論をちゃんとするフレームワークは用意している
      • 真実なのか、そう思うというただの考えなのかはっきり分けるように

所感と考え

会社の規模によってリモートワークに対する考え方が全然違うということをあらためて認識できました。会社の規模や業務内容によって仕事の進め方もそうだし、セキュリティ的な話(何を守りたいのか)もだいぶ変わってくるので当たり前といえば当たり前なんですが。
自社でどうしようかと考えてばかりいると、どうしても固定された考えになってきてしまうのでやはりこういう場は必要ですね。

個人的に思っていることをいくつかのポイントでまとめてみます。

評価について

評価方法はどこも悩んでいるようでした。
成果で評価すればいいじゃんって話もありますが成果は職種によりそれぞれ。数字できちんと出せる仕事の人もいるしそうでない人もいる。
サイボウズさんの評価指標に市場価値があるというのはかなり理想的ですが、人事制度を同じように変えるのはなかなか難しいですからね。

ここは結局、評価指標をどうするかがポイントだと思っています。
OKRなどできっちりと自身の役割をマネージャーと認識合わせをして定期的に1 on 1などで振り返りを行うことで、たとえリモートであろうと適切な評価ができるのではないかと考えています。すでにこういう評価が行えている会社はスムーズにリモートワークが導入できるのでないでしょうか。しかしこのような評価ができていない企業も多いはずです。

つまり、リモートワークをやるならマネージャーの意識改革(場合によっては評価制度の変更)も重要になってくるということです。リモートワーク自体の制度を入れることばかりに夢中になってしまいこの大事な部分を忘れがちになってしまっては元も子もないです。

オンラインでのコミュニケーションスキルは大事

「オンラインで文章をきちんと書けない人ではリモートは厳しい」
これはどこも共通認識としてあるようです。

これも話が出ていましたが、リモートワークが当たり前の時代になることを考えると訓練してもらうしかないと思います。
冷静に考えると、相手の文章をよく読み、論理的に文章を組み立てるということはビジネスでは当たり前のスキルではないのでしょうか?
これらができるように努力しないということは業務に必要なスキルの取得を放棄していると見なすこともできると思います。(ちょっと言い過ぎな気もしますが)

もしかしたら一般的なビジネス研修(論理的思考とかそういうもの)の中で「オンラインコミュニケーションのための文書作成術」のような研修が必要となってくるかもしれません。それくらいできて当たり前の風潮にしないといつまで経ってもできる人、できない人の差を埋めることは難しいと思っています。

オンラインとオフラインの使い分け

対面で話した方が細かいニュアンスまで伝わるのは間違いないです。なのですべてをオンラインだけでやる必要はありません。
さらにいうと、オンラインでもテキストだと厳しいがビデオチャットなら意思疎通ができそうという場面もあると思います。

そこで、自分たちの組織でのルールを決めておくことが大事になってくると思います。
「基本はオンラインのテキストでやりとりするが、こういうときはビデオチャットで、さらにこういう場合は対面でやる」というルールを明確に決めておけるとよりスムーズにコミュニケーションできるのではないでしょうか。

オンラインでの議論

この話はとても興味深かったです。
オンラインで議論するのが普通だと思っていたので、議論はオフラインで行い、オンラインは事実だけを報告する場という考えは新鮮でした。確かにこれだと顔の見えない相手と変な読み合いをしながらの議論をしなくて済みますからね。やったことある人は分かると思いますがオンラインでの議論はけっこう頭も体力も使うので。

個人的にはチームビルディングがしっかりできている、かつオンラインでのコミュニケーション能力が高い人が集まっていればオンライン上でも議論は可能だと思います。むしろリモートやる以上そこを目指さなければいけないのではないでしょうか。
そのためにも、サイボウズさんのようにオンラインでの議論のためのフレームワークみたいなものを作って徐々に浸透させていく必要があると思います。

ただ、その状態になるまではオンラインでの議論が空中戦になってきたと感じたら、「ちょっと1回対面で話しましょうか」という方向に持っていくことも必要となるでしょう。

さいごに

自分の考えをまとめていても思ったのですが、やはりリモートワークに対する考え方や仕組みについては正解がないものであり自分たちの組織に合ったものを試行錯誤しながら決めていくしかないと思います。同じ組織でも今はフィットしているが時代と共にフィットしなくなることも十分に考えられます。
働き方やそれにともなう制度を柔軟に変えられないとこれから先はいろいろと難しくなってくるでしょうね。

いろいろな会社の考え方を知ることができ、またリモートワークに対する考えをいろいろ整理できて非常に有意義でした。
主催者の皆様ありがとうございました。